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感染制御研究センター

センターの概要

私どもの研究の主体はMRSAでした。MRSAはβ-ラクタム薬耐性を司るmec遺伝子を獲得しています。しかし、その表現系はさまざまです。基本的にはオキサシリン耐性ですが、まれにオキサシリン感性のMRSA(OS-MRSA)が存在しています。いわゆるステルス型MRSAです。私どもは、これらのステルス株を我が国で最初に発見・報告しました。ステルス型MRSAをMSSAとして治療すると酷い目にあいます。

さらに、β-ラクタム薬(ペニシリン、セフェム、カルバペネム)によってVCM耐性が誘導されるMRSA(BIVR)も発見し、その耐性機序の解明も行いました。現在でもBIVRは血液分離株の5%前後が検出されています。BIVRにVCMとβ-ラクタム薬を併用すると悪化する可能性が高くなります。

また、順天堂大の平松先生と共に世界に先駆けてVISA(Mu50)やHetero-VISA(Mu3)を発見し、それらの耐性機序(細胞壁合成系の更新によるVCMの消費と共に細胞壁の肥厚によるVCMのトラップ)も明らかにしてきました。
最近では日本で2例目となる純粋なるVISA株を発見しました。これらの株は、国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センターの黒田先生方に解析をして頂き、理にかなった耐性機序の解明ができています。このVISA株はVCMが長期投与された患者の体内で、感性株から耐性株へと進化した株です。

さらに、我が国初のリネゾリド耐性菌やダプトマイシン耐性菌の発見と共に耐性機序の解明も行ってきました。また全国から依頼される耐性菌の再確認や耐性機序の解明、分子疫学的評価、さらには血清型の確認などを無料で行って依頼された施設にフィードバックしています。

現在はカルバペネム耐性緑膿菌(CRP)やカルバペネム耐性アシネトバクター(CRA)、特に腸内細菌科細菌のカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)やカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)のサーベイランスを行うと同時に、それらのβ-ラクタマーゼ産生遺伝子を検出しています。
また最近では嫌気性菌の基礎研究からin vivo感染実験系の確立、さらにはちょっと驚くような研究も行っています。

上記の研究とあわせて、大村創薬グループの一員として創薬に取り組むことになりました。本グループの持っている財産(化合物)からの創薬と、独創的な天然資源物の確保と新規化合物の発見、さらには沖縄県庁との協力による天然物創薬など、自然の恵みの豊さと多様性を目の当たりにすると、創薬に対する夢はさらに広がります。
また、AMED CiCLEに大日本住友製薬さんと共同で、「薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬を目的とした創薬研究」を応募し2017年採択されました。その研究に必要な世界中の耐性菌は、厚生労働省、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、国立感染症研究所の御支援のもと、無事に確保できました。今後、10年間をかけてAMR用の抗菌薬と耐性菌を選択しない薬の開発をおこなってまいります。
そのうえ大村創薬グループの特徴を最大限にいかした興和株式会社とのビッグプロジェクトも稼働しています。今後、興和株式会社と共に世界的に貢献できる薬を開発する予定です。

別件です。本センターは2006年から2008年までの日本化学療法学会全国サーベイランスの実施施設として、さらに2009年からは新たに2学会が加わった日本化学療法学会・日本感染症学会・日本臨床微生物学会の3学会合同抗菌薬感受性サーベイランスの実施施設として15年間を担当させて頂きました。この間、2万株におよぶ菌株の収集と約80万個のデータの蓄積を行う事ができました。この間、各施設へのデータのフィードバックばかりか、菌株管理から規定に則った他施設への分与、国内・国外の学会発表や論文化におけるデータのまとめと再チェックなども行ってきました。

しかし当センターの担当は2020年には終える事となりました。これまで真摯にご協力頂いた先生方、おしみない賛助を頂いた企業の方々、本当に有難うございました。