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研究内容

薬剤耐性(Antimicrobial resistance; AMR)が世界的な問題となる中、我々は薬剤耐性菌の感染制御に向けた多方面からの研究を展開している。
平成18年よりこれまで全国規模サーベイランスの実施拠点として、国内の感染症起炎菌の分離状況や薬剤感受性の変動、薬剤耐性菌の分離頻度などの調査を行いながら新規薬剤耐性菌に対する耐性機序の解明を実施している。
さらに併用療法を含む治療法に関する基礎研究から新たな感染症治療薬開発に向けた創薬研究を実施するとともに、ベッドサイドや開業医でも使える迅速診断方法の開発を行っている。
一方で、院内院外の感染制御を目指し、院内感染対策チームへの協力や、感染症治療ガイドラインの作成に参加している。

  1. 日本化学療法学会、日本感染症学会、日本臨床微生物学会による三学会合同抗菌薬感受性サーベイランスの実施拠点として、日本における感染症起炎菌の感受性と動向調査の実施 詳しくはこちら→http://www.3ssp.jp/
  2. MRSA, MDRP, MDABなど多剤耐性菌の耐性機序の解明と治療法に関する研究
    1) VISA株の発見Mu50株
    Activated cell-wall synthesis is associated with vancomycin resistance in methicillin-resistant Staphylococcus aureus clinical strains Mu3 and Mu50.
    https://doi.org/10.1093/jac/42.2.199
    2) 日本で2例目となるVISA株の発見
    3) Hetero-VISAとVISAの研究
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus clinical strain with reduced vancomycin susceptibility.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9249217
    Dissemination in Japanese hospitals of strains of Staphylococcus aureus heterogeneously resistant to vancomycin.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9400512
    Activated cell-wall synthesis is associated with vancomycin resistance in methicillin-resistant Staphylococcus aureus clinical strains Mu3 and Mu50.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9738837
    Increase in glutamine-non-amidated muropeptides in the peptidoglycan of vancomycin-resistant Staphylococcus aureus strain Mu50.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9786471
    4) Linezolid耐性MRSAの検出(日本初)
    Emergence of Linezolid-Resistant Mutants in a Susceptible-Cell Population of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus
    https://aac.asm.org/content/55/5/2466
    5) Daptomycin耐性MRSAの検出(日本初)
    ダプトマイシンヘテロ耐性化した臨床分離株の解析(MRSAフォーラム2017報告)
    6) β-lactam antibiotics induced Vancomycin-resistant MRSA(BIVR)の発見
     A)BIVR現象について
     B)薬剤暴露下のBIVR細胞の電顕画像
    Investigation of β-lactam antibiotic-induced vancomycin-resistant MRSA (BIVR)
    https://doi.org/10.1007/s10156-004-0371-X
    Rapid Depletion of Free Vancomycin in Medium in the Presence of β-Lactam Antibiotics and Growth Restoration in Staphylococcus aureus Strains with β-Lactam-Induced Vancomycin Resistance
    https://aac.asm.org/content/53/1/63.long
    Identification of the active component that induces vancomycin resistance in MRSA
    https://www.nature.com/articles/ja201075
    7) Oxacillin-susceptible methicillin-resistant Staphylococcus aureus
    (OS-MRSA)の検出 (日本初)
    Characterization of oxacillin-susceptible mecA-positive Staphylococcus aureus: a new type of MRSA
    https://doi.org/10.1007/s10156-006-0502-7
    8) 二酸化塩素の殺菌・殺ウイルス効果
    9) 酸性水(電解水)の殺菌効果
  3. 我が国における肺炎球菌莢膜血清型の疫学調査
     肺炎球菌感染症は、小児における感染症の中で、インフルエンザとともに検出頻度が高く、特に2歳以下の子どもが感染すると重症化することが多いことで知られている。
     しかし、予防接種の普及で、その発症状況に変化がみられるようになった。当センターでは、経年的に小児由来の肺炎球菌の抗菌薬に対する感受性試験と莢膜多糖体抗原血清型別を検査する事により、その動向に注目している。
     小児を対象とした、肺炎球菌ワクチン「プレベナー」は日本では2010年2月に発売された。2013年度からは、定期接種が開始。2013年11月からは、7価のワクチン「プレベナー」から、13価のワクチン「プレベナー13」に切り替わった。
     スライドは、肺炎球菌ワクチン「プレベナー」販売直後の2010年と、2年後の2012年について、その動向を詳しく分析したものである。
     2010年と2012年における、「プレベナー」のカバー率を比較すると、61.1%から21.9%へと大幅にさがっており、検出される型が、「プレベナー」に含まれていない型に変化している事がわかる。
    「プレベナー」に含まれている、7個の型(4、6B、9V、14、8C、19F、23F)については検出頻度が減少しているものの、それ以外の型である19A、6C、15Aの検出頻度が特に増加している事がわかる。
     薬剤耐性菌について見てみると、2012年のPRSPの割合は、2010年と比べて、全体的に減少傾向にあるが、「プレベナー」以外の15B、15Cで増えており、分離頻度とともに、今後の動向に注意が必要な型と思われる。
     すべての小児に対して、肺炎球菌の公費定期接種が可能となって今年度で5年が経過した。当センターでは、肺炎球菌感染症のその後の動向にも注目し、分析を進めているところである。
    1) 小児科領域耐性菌研究会 肺球菌ワクチン
    2) Serotype replacement of Streptococcus pneumoniae due to seven-valent pneumococcal conjugate vaccine in Japan.
  4. イムノクロマト法による感染症迅速診断方法の開発と製品化 (企業との共同研究)
  5. 薬剤耐性菌に有効な新規抗感染症薬の創薬研究 (学内外の研究機関と共同研究)
  6. 北里大学病院及び北里研究所病院の院内感染対策に協力
  7. 開発品の抗菌活性評価、医療用医薬品の市販後調査などの受託研究の実施